女子校だからこそできる「これからの進路教育」
2026/09/29
※掲載画像は、洛星ノートルダム女学院中学高等学校公式ホームページおよび2027年度学校案内に掲載されている校舎・施設写真を参考に構成しています。
洛星ノートルダム女学院中学高等学校 学校説明会レポート
9月28日、洛星ノートルダム女学院中学高等学校の塾対象学校説明会に参加してきました。
今回の説明会で、私が最も印象に残ったのは、大学合格実績でも、入試制度でもありませんでした。
校長先生のお話を聞きながら、私はこう感じました。
『これは、学校説明会というより、「これからの時代をどう生きるか」というキャリア教育の話ではないか。』
大学に合格することだけをゴールにするのではない。これから社会がどう変わるのか。
その社会の中で、今の中学生や高校生たちにはどのような力が必要になるのか。
そして女子生徒たちには、どのような可能性が広がっていくのか。
洛星ノートルダム女学院が今、教育を大きく変えようとしている背景には、そんな「未来から逆算した学校教育」があるように感じました。
「どこの大学を出たか」だけでは生きていけない時代へ
洛星ノートルダム女学院を運営するヴィアトール学園は、カトリック精神に基づく全人教育を基盤とし、「徳・知・体」を磨きながら、一人ひとりの能力を最大限に伸ばすことを教育の柱としています。
学校のパンフレットにも、「学ぶたびに、自分の成長が見える学校へ」という言葉があります。
これは単なるキャッチコピーではないと、今回の説明会を聞いて感じました。
校長先生が繰り返し話されていたのは、大学合格そのものを最終目的にするのではなく、18歳になったときに、その生徒がどれだけ成長しているかという視点です。
説明会資料でも「18歳時点での能力の最大化」が教育改革のポイントとして示されています。
これからの社会では、一つの会社に入り、その会社の中だけでキャリアを積み上げていくという働き方だけではなくなります。
転職する人もいるでしょう。
複数の分野で仕事をする人もいるでしょう。
AIやロボットと一緒に働くことも、今以上に当たり前になります。
だからこそ必要になるのは、「何を知っているか」だけではなく、「その知識を使って何ができるのか」。
そしてもう一つ。「必要になったとき、自分で学び直すことができるか」。
中学生や高校生のうちに身につけるべき力そのものが、変わり始めているのだと思います。
2040年、仕事の世界はかなり変わる
説明会では、2040年の人材需給予測についても触れられました。
文部科学省が経済産業省の「2040年の就業構造推計(改訂版)」をもとに整理した資料では、一定の産業構造転換が進むシナリオにおいて、2040年にはAI・ロボット等の利活用を担う人材が約339万人不足する一方、事務職は約437万人の供給超過となる可能性が示されています。また、現場人材も約260万人不足すると推計されています。これは将来を断定する数字ではなく、前提を置いたシナリオ推計ですが、今後求められる能力が大きく変化する可能性を示すデータとして興味深いものです。
ここで大切なのは、「だから文系はダメ、理系なら安心」という単純な話ではありません。
私はむしろ、「自分の得意分野を持ちながら、科学・数学・デジタル・AIなどを避けずに学べる人になること」
が重要なのだと思います。
文系・理系という昔ながらの境界そのものが、これから少しずつ薄くなっていくのかもしれません。
今、国も「理系女子」を大きく後押ししている
今回の説明会で非常に興味深かったのが、女子の理系進路についてのお話です。
2026年6月、政府は「女性活躍・男女共同参画の重点方針2026」、いわゆる「女性版骨太の方針2026」を決定しました。高市内閣のもとで決定されたこの方針では、「文理の壁」の打破と理工系女子人材の育成が具体的な施策として盛り込まれています。
特に目を引くのが、大学の工学系学部における女子学生の割合です。
2025年時点の約18%から、2040年には36%へ倍増させることを目指すとされています。女子児童・生徒や保護者が理工系分野に関心を持てるよう、女性のロールモデルを示していくことも方針に盛り込まれています。
洛星ノートルダム女学院の説明会資料でも、この流れを踏まえて、理系分野へ進む女子生徒を育てることが明確に意識されていました。
女子校にとって、これは大きな意味を持つと思います。
女子校だから、理系に挑戦できる
「女子校の良さは何ですか?」これは、保護者の方から時々聞かれる質問です。
今回、学校側が示した答えは非常に分かりやすいものでした。
女子が主役になる。
女子が遠慮せず挑戦できる。
女子が前に出る。
そして、安心して学び、伸びていく。
説明会資料でも、この4点が「女子校の魅力」として示されています。さらに、理系大学の人材との連携を強め、理系女子を育成していく方針も示されました。
理科実験をするのも女子。
探究活動で発表するのも女子。
行事を企画するのも女子。
リーダーになるのも女子。
当たり前ですが、女子校ではすべての役割を女子生徒が担います。
これは、思春期の6年間、あるいは高校3年間を過ごす環境として、一つの大きな特徴でしょう。
特に「理系は男子が得意」というような無意識の思い込みから離れて、自分が面白いと思ったことに挑戦しやすい環境には意味があると思います。
2027年度から「2コース制」へ
洛星ノートルダム女学院では、2027年度から教育課程を大きく変更し、
「探究進学コース」
「総合進学コース」
の2コースとなります。
探究進学コースは、考える力を伸ばしながら高い進路目標に挑戦し、将来の選択肢を広げていくコース。
一方の総合進学コースは、社会や文化、世界に目を向け、社会とつながる学びを通して、自分らしい進路を見つけていくコースです。
ここで私がいいと思ったのは、「理系コース」「文系コース」と完全に分断していないこと。
早い段階で「私は文系だから数学はいらない」「私は理系だから社会は関係ない」と決めつけるのではなく、自分の可能性を広げながら進路を考えていく。
これは先ほどの「文理の壁」という社会的な課題ともつながっています。
「英語が得意」から、その先へ
グローバルコンピテンシーという考え方
そして今回、もう一つ注目したい言葉があります。
グローバルコンピテンシー。
従来のように、英語を学ぶことそのものだけを目的にするのではありません。
まず、異なる文化や価値観に対して心を開く「グローバルマインド」を育てる。
そしてその上で、文化や考え方の異なる人たちと協働し、世界や地域の課題について考え、実際に行動する力を育てていく。
これが学校の考えるグローバルコンピテンシーです。
説明会資料では、ネイティブ教員とのチームティーチングを通じて、英語を単に「覚える教科」にせず、英語を使って学び、考え、議論し、説明する学習へ広げていく構想が示されています。
また、日本語で行う総合的な学習・探究活動とも連動させていく予定とのことです。
これも私は非常に大切だと思います。
英単語を何個知っているか。
文法問題を何問解けるか。
もちろん、それも大切です。
しかし、最終的に英語は「人とつながるために使うもの」です。
英語を勉強する学校から、英語を使って何かをする学校へ。
今回の改革の中で、私が特に注目している部分です。
「全員同じ海外研修」から「自分で選ぶ海外経験」へ
海外研修についての考え方も変わります。
円安による海外渡航費の高騰や国際情勢などにより、学校全体で一斉に海外へ行くことは以前より難しくなっています。そこで洛星ノートルダム女学院では、
「全員が同じ国へ、同じ時期に行く」ことだけにこだわらず、生徒自身の目的や希望に合わせて海外経験を選べる制度へと方向転換していきます。
説明会では、短期間の語学留学、3か月程度の留学、長期休暇を活用した海外大学プログラムなど、段階的に海外経験を積める仕組みが説明されました。
資料にも「柔軟な留学制度」として、中学から高校まで複数の海外経験を組み合わせていく考え方が示されています。
最初から「海外大学へ行くぞ!」ではなくてもいい。まず短期間海外へ行ってみる。そこで自信がつけば、次はもう少し長く行ってみる。そんなふうに、少しずつ世界を広げられる仕組みです。
これはとても現実的な制度だと思います。
学力面の改革も進んでいる
こうした新しい教育の話だけではありません。
学校として、日々の学力をどう伸ばすかという部分にも具体的な改革が進められています。
今年度からは、AIデジタル教材を使った個別最適化学習を導入。
さらに、女子大学生が常駐し、学習や進路について相談できる学習メンター自習室も設置されています。
5名の女子大学生が常駐するとされています。
加えて、京都駅からのスクールバス運行も始まり、通学面での負担軽減も図られています。
授業についても、生徒への授業評価アンケートを導入。
その結果を教員へフィードバックし、授業改善につなげています。
また、中学1年生・高校1年生の英語と数学では、すでに新コースを見据えた習熟度別の授業を試行しており、外部アセスメントを使って学力の変化も確認しています。
つまり、教育改革を「来年から始めます」と言っているだけではない。
すでに今年度から準備を始めているわけです。私はここも重要だと思いました。
「洛星」と同じ法人になった意味
2026年4月から、学校は学校法人ヴィアトール学園のもとで新しい体制となり、「洛星ノートルダム女学院中学高等学校」としてスタートしています。
単に名前に「洛星」がついただけではありません。
教育面での連携も始まっています。
京都大学キャンパスツアーへの参加、洛星の教員による講義、探究活動、クラブ活動など、さまざまな交流が紹介されました。
特に女子校という環境を保ちながら、同一法人内の洛星が持つ教育資源や卒業生ネットワークを活用できることは、今後さらに可能性が広がりそうです。
理系分野で活躍する女性の先輩や専門家と出会う機会を作るという話もありました。
中学生・高校生にとって、「こんな仕事をしている女性がいるんだ」という出会いは、とても大きいものです。
進路は、知らないものからは選べません。
ロールモデルとの出会いが、一人の生徒の進路を変えることだってあります。
私が今回、一番いいと思った言葉
「入学時の学力ではなく、卒業時の成長で勝負する学校」という趣旨のお話がありました。
私はこの考え方が好きです。
学校選びをしていると、どうしても偏差値を見ます。
もちろん偏差値は大切です。
しかし、中学校なら6年間。高校なら3年間。
子どもを預ける学校を選ぶとき、本当に見なければならないのは、「入学するときにどれだけできるか」だけではなく、「卒業するときにどんな人になっているか」ではないでしょうか。
洛星ノートルダム女学院は全校約400名という比較的小規模な学校です。
だからこそ、一人ひとりを見ながら育てる。
そして学力だけでなく、
考える力。
伝える力。
人と協働する力。
自分で学ぶ力。
自分の進路を自分で選ぶ力。
そうしたものを含めて、生徒を成長させようとしている。
今回、そんな学校の方向性がよく伝わってきました。
中学生のみなさんへ
今、「自分が将来何をしたいのか分からない」という人もいるでしょう。
それでいいと思います。中学生の段階で、将来の仕事まで決まっている人のほうが少ないはずです。
だから大切なのは、今の自分が知っている世界だけで、将来を決めてしまわないこと。
理科がちょっと面白いなら、もう少しやってみる。
英語が好きなら、外国の人と話してみる。
人前で話すのが苦手なら、少しだけ発表してみる。
海外に興味があるなら、一度外へ出てみる。
そうして「やってみたこと」が増えると、自分の世界は少しずつ広がります。
その中から、「これ、面白いかもしれない」というものが見つかればいいのです。
高校を選ぶということは、単に「次の3年間をどこで過ごすか」を決めることではありません。
3年間で、どんな自分になりたいのか。そこまで考えて学校を見てほしいと思います。
保護者の皆様へ
これからの子どもたちが生きる社会は、私たちが学生だった頃とはかなり違うものになっていくでしょう。
AIが広がり、働き方が変わり、転職も珍しくなくなり、海外の人と一緒に仕事をすることも増えていく。
だからこそ学校選びでも、「どこの大学に何人合格したか」だけでは測れない部分が、以前にも増して重要になっていると思います。
この学校で、わが子は何を経験できるのか。
どんな力を身につけられるのか。
自分で自分の進路を選べる人に成長できるのか。
ぜひ、そんな視点でも学校を見ていただきたいと思います。
今回の洛星ノートルダム女学院の説明会は、私自身にとっても、「これからの学校教育とは何だろう」と改めて考える機会になりました。
学校は今、大きく変わろうとしています。
そして、その変化を見ることは、子どもたちがこれから生きる社会を見ることでもあります。
洛星ノートルダム女学院中学高等学校。
これからの変化を、私も注目して見ていきたい学校の一つです。


